マスコミの興味の対象
さて、本日は一連の
イラン問題に関する報道から、「
マスコミが何に興味を持っているのか」についての考察をしてみます。
まずはこちらの記事から
最恐テロリストのソレイマニを「イランの英雄」と報じるメディアの無知
Newsweek 2020年01月11日
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<米軍に殺害されたクッズ部隊司令官は、アラブ諸国で「虐殺者」と恐れられてきた>
イラン革命防衛隊「クッズ部隊」のガセム・
ソレイマニ司令官が米軍機の攻撃によりイラクの首都バグダッドで殺害されたことは、日本でも大きく報じられた。日本メディアの多くは彼を「
イランの英雄」と紹介し、米トランプ政権を非難した。
だが
ソレイマニを英雄とたたえるのは、
イランの体制派のみである。
イランには国内外に自由化・民主化を求める分厚い層の反体制派がいる。彼らにとって
ソレイマニは、抑圧的独裁政権の暴力的側面の象徴だ。
イラン・イスラム共和国は1979年、「イスラム革命」で親米政権を打倒することにより誕生した。共和制を取りつつも基本的にはイスラム教シーア派のイデオロギーに立脚した統治を行っており、西洋的な自由・人権・民主主義を認めていない。反体制デモは弾圧され、女性は頭髪を隠すヒジャーブを取り外しただけで拘束され、同性愛者が毎年多数処刑されている。
イスラム革命の成就後、革命体制を防衛するため正規軍とは別に設立された武装組織が革命防衛隊であり、その傘下に国外での工作活動に従事するクッズ部隊が創設された。98年頃からその司令官を務めていたのが
ソレイマニである。
ソレイマニが最高指導者アリ・ハメネイの寵愛を受け、英雄とたたえられてきたのは、彼がイランの至上目的である中東における覇権確立、いわゆる「シーア派の弧」の形成任務を担い、それを一歩一歩着実に実現してきた参謀だったからだ。
死亡を喜ぶハッシュタグが
イランは正規軍を動員するのではなく、クッズ部隊の工作活動を通じて主にシーア派勢力に資金や武器を提供・支援することで影響を強化し、次第に他国全体を実質的支配下に収める戦略を取った。ソレイマニは20年にわたって中東各地でその活動を展開し、イラクとレバノンをほぼ手中に収めた。アラブ諸国において彼は反対者をことごとく虐殺し、国家を分裂させイランの属国化する最恐テロリストとして知られてきた。
クッズ部隊には1万人ほどの兵士がおり、破壊工作や要人暗殺だけでなく戦闘にも直接従事する。2011年に始まったシリア内戦ではアサド政権側に付き、反体制派住民を包囲して餓死させる残忍な戦術を実行した。毒ガス使用を指示したのも彼だとされる。19年10月からイラクで発生している反体制デモの参加者を殺害しているのも、クッズ部隊の指揮下にあるシーア派民兵組織だ。
ソレイマニ死亡のニュースが伝えられると、シリアとイラクの両国で彼に弾圧されてきた人々が喜びを爆発させる映像や写真がSNS上に出回った。アラビア語ではハッシュタグ「テロリスト・ソレイマニ死亡」の付いた「地獄に落ちろ」「神よ、呪いたまえ」などの罵詈雑言と、殺害を祝福する投稿があふれた。
一方、「数百万人が殉教者ソレイマニ司令官の葬儀に参列」という国営メディアの報道について、イラン人ジャーナリストで人権活動家のマシ・アリネジャドが1月7日、米ワシントン・ポスト紙に「イランのプロパガンダを信じるな」という反論を掲載。学生と公務員には葬儀への参加が義務付けられていると説明した上で、彼を戦争犯罪人だと非難するイラン人の声が西側メディアに届かないのは極めて遺憾だ、と記した。
CNNの名物アンカーであるアンダーソン・クーパーは、ソレイマニを対ナチス・ドイツ戦を率いたフランスの国民的英雄シャルル・ドゴールになぞらえたが、これは全く的外れである。自由を重んじるフランスでは、ドゴールを批判・罵倒しても拘束されたり銃撃されたりしないが、イランやその支配下に置かれた地域にこのような自由はない。
関連記事(上記を書いたのと同一人物の記事)
イラン情勢を巡る日本メディアの奇妙な偏向報道(特別寄稿)
アゴラ 2020年01月12日
http://agora-web.jp/archives/2043700.html
こちらの記事では、先日米軍によって殺害されたガセム・ソレイマニ司令官に関して、日本のいくつかのメディアが「イランの英雄である」と報道していた件、実態としての彼は単なる虐殺者であり、「イランの政府側の人間」にしか支持されておらず、現地では彼に批判的な声の方が多いとしています。
そして、ソレイマニ氏を英雄として報道するメディアに対して批判を行っています。
この件なのですが、少し個人的に調べてみたところ、確かに彼は英雄と呼と呼ばれるほどの支持を集めていないうえに、またイラン自体国内でやっている事が北朝鮮や中国とさして変わらないこともすぐにわかります。
ですので、言論弾圧の急先鋒のような人物を英雄として称賛するメディアは明らかにおかしいわけですが、ではそれに反対する側は単に弾圧に対して立ち上がった人々かといえば少々違います。
巷では上記記事のような意見に対して「アメリカの工作」といった話をしている人もいますが、実態は要するに「(宗派問題も含めた)地域覇権の争い」に外部の国が介入しまくっている、それだけの事なのです。
元々介入や宣伝工作はアメリカだけに限ったことではなく、地域覇権争いに様々な利権や宗教的思惑が絡み、相当に混沌としています。
ですから、当然彼を英雄視するメディアは当然問題ですが、同時に最初に挙げた記事も「話半分に聞いておいた方がいい」という事です。
本人にその意図があるかないかに関係なく、特定の勢力の意向が入っている可能性があるからです。
そのうえで一つはっきりしている事として、実際にイラクでデモや政府批判が激しく弾圧されたのは紛れもない事実であり、その弾圧の指揮を執っていたのがソレイマニ氏であることは間違いないという事です。
そのため、この問題では普段言論の自由や民主主義を訴えているメディアが、今回は言論の自由や民主主義を弾圧する側を支持ているという事になります。
ただ、これだけですと「よく調べもせずに反トランプの意図から反対側を支持ているだけ」という考え方もできます。
それはそれで問題ではありまが。
そのうえで次の一連の記事を見てください。
「韓国政府による北船員送還、国連で調査しようとしたが白紙に」
朝鮮日報 2020/01/11
https://megalodon.jp/2020-0113-2333-25/www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/01/11/2020011180012.html
キンタナ北朝鮮人権報告官が明かす
韓国政府の非協力に遺憾を表明
「送還関連の責任者を問責すべき」
昨年11月初めに
韓国政府が、亡命意思を表明した北朝鮮の船員2人をわずか三日で北朝鮮へ強制送還した件に関連し、国連のトーマス・オヘア・キンタナ北朝鮮人権特別報告官(写真)は「
韓国政府が行ったことは明確に国際法と国際規範に背く」と語った。キンタナ報告官は9日、本紙の電話インタビューに応じ、「独立的調査(investigate)がなされて責任者が問責されるべき」だとしてこのように語った。
またキンタナ報告官は、昨年11月末から12月初めに訪韓しての現場調査を行おうとしたが、
韓国政府が「関連する当局者は全員ほかの日程がある」と難色を示した-と明かした。「
韓国政府が調査の妨害のため協力しなかったとみているのか」という質問に対し、キンタナ報告官は「推測したくはない」と述べつつも「提起したい問題が多かったので、(非協力的態度は)遺憾だった」と答えた。さらにキンタナ報告官は「2016年に北朝鮮人権特別報告官になった後、毎年末に韓国を定期的に訪問していたが、こうしたこと(訪韓の白紙化)は初めて」と語った。
韓国政府は、北朝鮮の船員は同僚16人を殺害した「凶悪犯」だという理由で強制送還決定を正当化した。しかしキンタナ報告官は「全ての人は、犯罪の嫌疑や犯罪行為とは関係なしに、虐待・不法拘禁されかねない国へ送還されてはならないという強制送還禁止原則(non-refoulement)が適用される」として、「(事件後)韓国政府に送った書簡でこの点を強く提起した」と語った。キンタナ報告官は「私は、中国政府は(脱北者に対する)強制送還禁止原則を尊重すべきだと絶えず求めてきており、韓国政府は常にこれを支持していた」として、「今回の送還は、それと矛盾する」と指摘した。
その上で、キンタナ報告官は「韓国政府に送った書簡で、(船員らを)送還した理由、法的手続きなどを尋ねたが、韓国政府の回答は全く不十分だった」として、「どんな出来事があったのか韓国政府は明らかにせず、送還の理由や考慮したという事項も混乱していた」「(今年上半期に計画している)韓国訪問で、この事件を調査する司法府を訪問する」と語った。
このほかにも、キンタナ報告官は「韓国政府は国連と相談せず、私とも相談しなかった」として、「基本権について何らの尊重もなく、わずか数日でそのままあの人々を(北朝鮮へ)送ってしまった」「人間の基本権が係ることであれば、秘密に付したり、(南北)両政府の間でのみ行われたりしてはならない」「透明に、一般の人々に公開されなければならず、責任者は問責されるべき」と語った。さらに「(今回の送還は)韓国政府の単なるミスや誤った手続きであってほしい」「将来再び起きてはならない」と語った。
金真明(キム・ジンミョン)記者
【社説】大学構内に政権批判の壁新聞掲示して「無断侵入」になる喜劇
朝鮮日報 2020/01/11
https://web.archive.org/web/20200111142029/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/01/11/2020011180010.html
現政権を批判する壁新聞を大学構内に掲示したとして、右派青年団体の20代の会員が建造物侵入罪で起訴され裁判を受けることになった。この男性が壇国大学天安キャンパスに壁新聞を掲示したのは昨年11月だった。中国の習近平・国家主席の顔が印刷された問題の壁新聞には「私(習近平)の忠犬・ムン・ジェアン(ジェアン=災難の意、文大統領の名前をもじったもの)は高位公職者犯罪捜査処(公捜処)や連動型比例代表制を通過させ、総選挙で勝利した後に米軍を撤退させ、完ぺきな中国の植民地になるように準備を終えるだろう」と書かれていた。大学などでよくみる一種のパロディ壁新聞だ。このように壁新聞の内容自体は法的に問題がなかったため、警察と検察は「この男性は大学に無断で侵入した」として建造物侵入罪を適用した。どう考えてもあり得ないことだ。
建造物侵入罪は「建物の管理者の意志に反して侵入した時に成立する」というのが大法院(最高裁に相当)の判例だ。ところが通常、大学には周辺の地域住民、営業社員、配達員など様々な立場の人が特に許可を受けることなく出入りすることができる。壇国大学天安キャンパスも構内に立ち入る際には特に制約はない。大学側も「校門は開放している」と説明した。しかもこの男性は大学構内の5カ所に壁新聞を貼っただけで、何か違法行為をしたわけでもなかった。大学側も「無断侵入された事実はない」「被害も発生していない」と説明している。警察に通報し、この男性の処罰を求めているわけでもないという。
それでも警察と検察は監視カメラ映像まで使って捜査を進め、判例はもちろん一般常識にも反する形で無理に法律を適用し、将来のある若い20代の若者を法を犯した人間に仕立て上げようとしている。捜査権をめぐって対立する検察と警察が政権の顔色をうかがい、勝手にこびへつらっているのだ。世の中全体が少しずつコメディのように変わりつつある。
青瓦台と韓国検察、家宅捜索めぐり正面衝突
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2020.01.11 10:01
https://japanese.joins.com/JArticle/261406
青瓦台(チョンワデ、大統領府)秘書室に対する家宅捜索をめぐり10日、青瓦台と検察が正面衝突した。検察はこの日、宋哲鎬(ソン・チョルホ)蔚山(ウルサン)市長の公約づくりを支援したという疑いで青瓦台自治発展秘書官室(旧均衡発展秘書官室)に対する家宅捜索を試みたが、青瓦台がこれを拒否した。
ソウル中央地検公共捜査2部はこの日午前10時ごろ、青瓦台与民館自治発展秘書官室で家宅捜索令状の執行を試みたが、午後6時20分ごろ手ぶらで撤収した。
文在寅(ムン・ジェイン)政権に入って青瓦台に対する検察の家宅捜索令状執行は今回が4回目となる。この日の家宅捜索は、旧均衡発展秘書官室が宋哲鎬蔚山市長(71)の公共病院などの公約に関連して作成した資料を確保するためだった。
青瓦台の高ミン廷報道官は「検察が持ってきた家宅捜索令状は押収対象が特定されていなかった」とし「検察が『犯罪資料一切』という趣旨で対象を記載するなど任意提出方式でも協力しがたい家宅捜索令状を持ってきた」と述べた。また「検察ははっきりと知りながらも『見せるための捜査』をしたということ」と話した。
検察は高報道官の発表後、別の資料を出し、「(青瓦台に)資料任意提出を何度か要求したが、ほとんど提出できないという通知を受けたため令状を執行した」とし「裁判所から発行された家宅捜索令状と共に詳細目録を追加で交付して資料提出を要請したが、令状の押収範囲が特定されていないという理由で提出を受けられなかった」と明らかにした。
検察は「現行法上、軍事上の秘密を要する場所はその責任者の承諾なしに押収または捜索できないが、国家の重大な利益を害する場合を除いては承諾を拒否できないよう規定している」とし「検察は令状執行を拒否する場合、承諾を拒否する意思を明示した書面を提出してほしいと要請したが、これも受けられなかった」と明らかにした。
検察は8日の幹部人事後、9日に大統領直属国家均衡発展委員会事務室、10日に青瓦台に対する家宅捜索に踏み切るなど捜査を加速させている。今回の捜査を指揮するソウル中央地剣長ら指揮ラインは13日に交代する。
検察に対する政府・与党の圧力も強まった。8日の検察幹部人事以降、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官が国会本会議場で法務部政策補佐官に文字メッセージを送り、「指揮・監督権限の適切な行使のために懲戒関連法令を探しておくべき」と指示したという。尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長に対する懲戒を準備すべきというメッセージと解釈される。
与党・共に民主党の李海チャン(イ・ヘチャン)代表もこの日、尹総長が秋美愛長官の人事意見提出要請に応じなかったことに関し「抗命は放っておけない」と話した。
法務部は検察に対する監督権限と組織改編で検察に圧力を加えている。秋美愛長官はこの日、職制にない捜査組織を別に設置する場合は長官の事前承認を受けるべきと最高検察庁に指示した。法務部は検察の捜査部署を減らす案も推進するという。
まず最初の記事では、去年韓国へと逃げてきた北朝鮮船員を、韓国政府が北朝鮮に言われるがまま、「殺人犯だ」として送り返してしまった事例に関して、キンタナ北朝鮮人権特別報告官が調査をしようとしたところ、韓国政府に妨害されできなかったとする記事です。
次の事例では、韓国の大学構内に文政権批判の壁新聞を貼った人物が、大学側が訴えてもいないにも関わらず、警察に「不法侵入」で摘発されてしまったという事例。
最後は韓国検察が韓国の大統領府関係者の関わる不正選挙問題に関連し、青瓦台を家宅捜索しようとしたところ、政府側の妨害にあい出来なかったとする記事です。
実はこの件、構造としては先ほどのイランの事例と似ているのです。
ここで重要となるのが、
文在寅大統領は彼が大統領に就任した当初、日本を含む複数のメディアが「民主主義の体現者」であるかのように称賛していた事です。
しかし実際にはこの通り、規模こそ違えどやっている事はイランとさして変わらず、民主主義や言論の自由とは程遠い政治を行っています。
そして問題は、こうした有様であるにもかかわらず、かつて文政権を称賛した日本や他国のメディアはこの件にほぼ触れようともしない事です。
このことから解るのは、そもそもこうしたメディアは称賛する対象がどんな相手なのかには実際には興味がないという事です。
では彼らは何に興味があるかといえば、自分達と政治的に対立する相手を攻撃する事だけです。
そのため、政治的に対立する相手が何かをすれば言論弾圧や人権侵害、あるいは民主主義の危機を訴えますが、「ダシに使った相手」が実際に言論や人権の弾圧をしようが、民主主義を脅かす行為をしようが、まるで興味がないであろうという事です。
そうでないならば、そもそも文大統領は現状「彼ら」から民主主義を脅かした権力者として大バッシングを受けていなければおかしいからです。
彼はそれだけの事をしているわけですから。
それがないという事は、今回紹介したような報道をするメディアはそもそも言論の自由にも人権にも民主主義にも実際には興味がなく、ただ自らの利益に反する相手を攻撃しているだけという事になります。
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